長狭物

社畜による情けない日々

【地域】内灘海岸の浜茶屋(海の家)が県などを提訴?

 

〈10〉2016年12月17日(土)北國新聞朝刊----------------------------☆
◎内灘町の浜茶屋が県を提訴 「夜間営業」で占用不許可 管理組合

 内灘海水浴場(内灘町)の浜茶屋が今夏、許可外の「夜間営業」を行ったとして、石川県が管理組合に対して土地の占用を不許可とした問題で、組合側が県を相手取り、処分の取り消しを求める訴訟を金沢地裁に起こしたことが16日、分かった。浜茶屋の撤去を求めている県に従わず、組合側が「不法占用」の解消を図ろうとした格好で、浜茶屋の営業や撤去をめぐる問題は法廷で争われる。
 訴えを起こしたのは、浜茶屋3軒でつくる「内灘海岸海の家管理組合」。北國新聞社の取材に対し、吉田幸二組合長は「弁護士に対応を一任している」と話した。
 組合は今夏まで海岸管理者の県に土地の占用を申請し、許可を受けてきた。県は1年を通じて組合に占用を認めてきたが、今春に無届け施設の建設が確認されたため、今年度は海水浴シーズンの7月15日から9月末までの期間に限って許可した。組合側は10月以降の占有許可をあらためて申請したが、県は不許可とし、現在も建つ浜茶屋は不法占用状態となっている。
 県が占用を許可しない背景には、組合側が今夏、県の再三の是正要請に従わず、「夜間営業」を継続したことがある。
 組合と県、津幡署などでつくる内灘海水浴場連絡会は3月、夜間のトラブル防止を目的に、浜茶屋の営業終了時間を午後6時とすることで合意した。しかし、合同パトロールで午後6時を超える営業などが確認されたため、県は文書や口頭で15回にわたり行政指導した。10月以降は浜茶屋の撤去要請を2回行っている。
 組合が撤去に応じず、訴訟が長引けば、来年度の海水浴シーズンに「不法占用」の浜茶屋が内灘海水浴場に存在する可能性があり、利用客の混乱は避けられない状況となる。連絡会関係者は「提訴することで、組合が撤去作業の引き延ばしを図ったのではないか」と推測した。
 浜茶屋の営業問題が議会で議論されている内灘町は、来夏の組合による浜茶屋開設は困難とみており、「町か民間か、いずれにせよ海水浴場を開きたい」としている。町は来年度当初予算編成などで海水浴場の運営方法を検討する方針で、担当者は「訴訟の影響などの状況をみて、町の対応を決める」としている。
 本社の取材に対し、海岸を管理する県港湾課の担当者は「訴訟の過程で、県側のしかるべき主張をしていく」と語った。第1回口頭弁論は来年1月17日に開かれる。

 

出典:http://www.hokkoku.co.jp/f-mail/back/uchinada/20161223.txt

 

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たまには元パラリーガルっぽい話題。 

このほか地元紙によると、原告側は

・これまで許可されていたものが急に許可されなくなるのはおかしい

・町役場と県庁がグルになって自分たちを潰そうとしている

 

など主張しているようです。

 

※7月26日追記

関連記事です。

 

midnightcats.hatenablog.com

 

 

 

海岸法とかいうマイナーな法律

ニュース中の「土地の占用」とは、海岸法第7条の許可のことを指します。

 

  (海岸保全区域の占用)
第七条    海岸管理者以外の者が海岸保全区域(公共海岸の土地に限る。)内において、海岸保全施設以外の施設又は工作物(以下次条、第九条及び第十二条において「他の施設等」という。)を設けて当該海岸保全区域を占用しようとするときは、主務省令で定めるところにより、海岸管理者の許可を受けなければならない。
  2  海岸管理者は、前項の規定による許可の申請があつた場合において、その申請に係る事項が海岸の防護に著しい支障を及ぼすおそれがあると認めるときは、これを許可してはならない。

 

食品衛生法の許可のように、一定の基準を満たせば誰でも許可が受けられる類の制度ではなく、「海岸の防護に著しい支障を及ぼすおそれがあるか」どうか、行政(海岸管理者)の裁量が相当程度重視される制度のようです。

行政法規にありがちなふわっとした表現です。通知やガイドライン、会議資料といった拘束力の無い形で、色々と考え方の指針は国から示されているようですが、肝心の許可・不許可の判断は、海岸管理者=地方自治体任せとなっています。

第四 海岸保全区域の占用及び海岸保全区域における行為の制限

 法第七条第一項の規定による占用の許可は、国有財産法上の公共用財産たる国有海浜地について行うものであるので、その許可に際しては、当該公共用財産たる土地の公共的性格に十分留意の上、その用途又は目的を妨げない限度において、かつ、海岸の保全に著しい支障を及ぼすおそれがないと認められる場合に限り許可をするよう、その運営の適切を期せられたいこと。

 

出典:海岸法の施行について(海岸法施行当時の通知文)

 

通知文の中では、土地の公共的性格に十分留意するよう、付け加えられています。

海の家の場合は、こちらの条件のほうが重要でしょう。

 

海の家の存在は、果たして「公共的な土地利用

そもそも海の家は、波打ち際近くの砂浜に設置されることが多いです。

海水浴場として使える砂浜は遠浅で波の穏やかなところでしょうが、もし大きな波が来たら、どうなるでしょうか?

海の家の建物が壊れ、災害や海洋汚染の原因になります。

したがって、海の家の存在自体は、「海岸の防護に著しい支障を及ぼすおそれがある」ものと解されます。

(海の家に限らず、堤防のような海岸防護を目的とした構造物を除き、ほとんどの構造物は海岸法上「海岸の防護に支障があるもの」としてみなされます。けっこう厳しい規制です。)

さらに海の家は、基本的には海水浴客向けの商業施設です。国有地である海岸で、一私人がお金もうけをするのは、土地の公共的性格に留意した使い方とは言えません。

 

 

しかし、海岸法ができたのは昭和31年のことで、当時すでに全国にたくさんの海水浴場が存在しました。

これらを一律禁止することは非現実的ですし、海水浴というレジャーそのものを破壊することになります。

そのため、海の家があることで、無秩序な海水浴がある程度規制され適正な海岸利用に資するため、公共的性格を考慮した土地の使い方にも沿っている、という解釈がされているようです。

加えて、「海岸の防護に著しい支障を及ぼすおそれ」を低減するため、許可期間は夏場だけに限られることがほとんどです。もちろん、設置できる場所も、このおそれがない場所だけに限られます。

 

 

海岸法の流れをまとめると、以下の通りになります。

 言い訳のようにも見える論理展開ですが、法規制と既得権の折り合いをつけるには、こうするしかなかったのでしょう。全国的に慣例になっているようです。

 

  1. 海の家はそもそも「海岸の防護に著しい支障を及ぼすおそれがある」、許可できないもの
  2. さらに、海の家のような商業施設は、土地の公共的性格に留意した使い方とはいえないため、やはり原則許可できない
  3. ただし、無秩序な海水浴を規制し、海岸の適正な利用に資する限りは、公共的な使い方をむしろ促進することから、許可できる
  4. 海岸の防護の観点から、いつでもどこでも設置できるわけではなく、時期・場所はかなり限定される

 

そのため、無秩序な海水浴を規制できない海の家は、許可できないことになります。

不許可とされたしまった内灘の海の家は、ルール無視の夜間営業などを繰り返したため、管理能力が無いと判断されてしまったのです。

 

訴訟の行方(私見)

行政指導の回数をしっかり確保しているあたり、行政側は最初から提訴覚悟で不許可処分をしたように見えます。

加えて、町役場から「別の形で海水浴場を〜」とコメントが出れば、確かに陰謀論を疑いたくもなるかもしれませんが……そもそも自業自得では?

 

それよりも、ずっとやんちゃを通り越して違法行為を働きまくっていながら、これまで行政側が法的措置に乗り出さなかったのか?こちらの方が気になります。

「指導はしていた」ということは違法状態であった認識は行政側にもあったはずで、毎年許可していたということは、毎年不許可にするきっかけはあったはずですが、これまで荒事にしなかったのは、行政側がこの問題を公にしたくなかったためであり、きっと背後に何らかの強者が控えているんだろうと推測してしまいます。

 

訴訟自体は絶対原告敗訴でしょとしか思えませんが、超法規的な何かが飛び交う(というか行政側に浴びせられる)戦いになるかもしれません。行政関係者各位の無事を願うばかりです。

 

(追記)

  • 「海岸の防護」という聞きなれない日本語がありますが、具体的には、堤防などの波浪・高潮から人命や家財を守るための設備や、消防が水門を閉めたり人命救助したりする活動が挙げられます。
  • 基本的に土地の占用を認めないのが海岸法ですが、行政がきちんと作った道路なんかは、海岸の防護に支障が無いとして問題なく長期間許可しているようです。
  • 通知によると、漁具は海岸法の規制対象外とのこと。正直、海の家より漁船のほうが海岸の防護に支障がありそうな気がするのですが、やっぱり既得権が強いのでしょうか……

 

 

参考書籍(パラリーガル時代に事務所に置いてありました)

 

海岸管理の理論と実務

海岸管理の理論と実務