長狭物

社畜による情けない日々

電通の違法残業、罰金50万円……

電通が起こした痛ましい事件の初公判にて、罰金50万円求刑とのこと。

headlines.yahoo.co.jp

 

「安すぎる」という声が多く上がっていますが、そもそも労働基準法の罰則で最も厳しいものが

 

     第百十七条        第五条の規定に違反した者は、これを一年以上十年以下の懲役又は二十万円以上三百万円以下の罰金に処する。

 

 

であり、上限額の300万円であっても人命に反して「安い」と見えるのではないでしょうか?

 

 

※報道だけを見ていると、今回の「50万円」がどの条文に照らしているのか、明示されていません。上記の「第5条」は「強制労働の禁止」になりますが、今回の件がこれにあたるのであれば、300万円まで攻められるところをあえて50万円にとどめたことになりますが、そうであるとは断言できません。

真相がわからないので、50万円という金額にはあえてこだわらず、上限の300万円に着目しています。

 

 

300万円ってどれくらいの痛手なのか?(私見)

これまでの自分の経験では、大手の広告代理店に仕事を発注した場合、発注額の15%前後を「管理費」、つまり利益分として確保されます。

(数百万円単位の小さな仕事の場合です)

 

具体的に言うと、「予算上限1000万円で頼む」とオーダーした場合、このうち150万円は先方の利益分として切り分けられ、実際の働きとしては850万円分となります。

この850万円を使って、先方スタッフの人件費や交通費、広告物の作成、備品のレンタル、イベント会場のセッティングなどをやってもらうことになります。

 

多分、850万円をまるきり使うように見せかけて、うまいこと経費カットして儲けを出しているのでしょうが、少なくとも発注額の15%くらいは粗利があるのだろうと思っています。

 

 

以上から、300万円の罰金をカバーするには、300万円の粗利……つまり発注額2000万円の業務を1個受注すれば済むことになります。

どこかの自治体のプロモーション事業でも落札できれば、簡単にカバーできる規模のように思います。正直、大した痛手ではないでしょう。

 

自分は発注時に「値切らないけど結構わがまま言うかも……」と前置いてから見積もりをもらうので、通常はもっと管理費幅は小さいかもしれません。

推測の一例として読んでいただければ。

 

罰則が軽すぎるせいで再犯が続出した事例があります

300万円の罰金は大企業にとっては大したことないとすると、こうした事案の再発が懸念されます。

懸念されるというよりも、罰則が軽すぎて実際に再犯が相次いだ事例があります。

 

www.env.go.jp

 

絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律種の保存法)」では、絶滅危惧種などの貴重な動植物を無断で捕獲したりすると罰則が課されますが、密売による利益が罰則による損失を軽々超えていたため、再犯が相次いでいました。

 

この実態を受けて、平成25年に法令改正され、罰則が大幅に強化されています。

(改正による効果までは見つけられず……)

 

過労自殺の場合、強烈な社会的非難を受けるとともに、信用低下による経営への悪影響も大きいことから、単純な類推はできませんが、罰則が軽すぎるあまり抑止力として機能しないことは、十分にありえると思います。

 

これからの話

ここまでずっと「法令の罰則規定が甘いのでは?」と言う趣旨で書いてきましたが、違法残業に関しては、まずは管理者のモラルの問題だと思います。

法令の罰則規定が甘いことが根本原因だとしても、改正には時間がかかります。過労自殺防止は喫緊の課題です。

管理者のモラルを正すためには、まず管理者に「違法残業は良くない」と常に認識してもらう……つまり絶えずニュースにして、目に触れさせるしかないと思います。

理想としては、ヤフーニュースのトップに常時「残業を考える」のような論説が、代わる代わる出ているような状態でしょうか……

 

また個人的な話で恐縮ですが、D社は下請けに対してはもっとひどいことをしていると、いろんな業種の方から聞かされているので、感情的にはもっと参らせて欲しいなと思うところです。D社は下請けを使い捨てて利益を上げて、同業のH社はアメとムチを使い分け、下請けをぎりぎり食わせて忠誠心と利益を同時に上げているとかなんとか……